熱交ドリル

汚れ係数

熱交換器を連続して運転する場合、流体中の溶解成分が晶出して管壁に付着、あるいは流体中の浮遊物が管内に沈積します。この付着物によって伝熱は阻害され、熱交換器の性能が時間の経過と共に徐々に低下します。
この伝熱阻害の程度を表したものを汚れ係数と呼び、熱交換器の設計では予めこれを予想し、余分な伝熱面積を加味する必要があります。
この汚れ係数を加味した伝熱係数を表す式は以下のようになります(管外基準)。

1/Ud=1/Uc+ri(Do/Di)+ro

Ud:汚れを考慮した総括伝熱係数[W/(m2・℃)]
Uc:汚れを考慮しない総括伝熱係数[W/(m2・℃)]
ri:管内側汚れ係数[m2・℃/W]
ro:管外側汚れ係数[m2・℃/W]
Di:管内径[m]
Do:管外径[m]

汚れ係数が大きいとUdが小さくなり、伝熱の性能としては低下します。
汚れ係数が小さいとUdが大きくなり、伝熱の性能としては向上します。

PHEでの汚れ係数は、多管式の汚れ係数よりも小さくとることが出来ます。その理由は以下のためです。

  • プレートの凹凸によって流体が乱れるため、流体中の個体粒子が沈積しにくくなります。
  • 多管式では胴側の邪魔板近くで流体が停滞しますが、PHEではこのようなデッドスペースがありません。
  • プレートの表面が滑らかで、場合によっては鏡面仕上げも可能です。
  • PHEではプレートの厚みが薄いので、腐食を避けるために必然的に高級材質を用いることになり、腐食によって生成する錆類の沈積がありません。
  • 伝熱係数が大きいため、冷却水側のプレート壁面温度が低くなり、冷却水からの溶存塩類(Ca2+,Mg2+など)の析出が生じにくくなります。
  • クリーニングが容易です。PHEではデッドスペースがなく、また液のホールドアップが少ないので、化学的クリーニングを有効かつ素早く行うことができます。

従って、PHEの方が多管式よりもより高い伝熱性能を得ることができます。
また、この汚れ係数は熱交換器の種類だけでなく、流体の種類や操作温度、流速によっても変化します。