メンテナンスサポート

メンテナンスガイド

メンテナンスの必要性

プレート式熱交換器は可動部がなく構成部品が少ない、故障やトラブルの少ない機器ですが、
長期間使用していると、プレートガスケットの劣化やスケールの付着、貫通割れなどの不具合が生じます。

製造ラインの健全な運営のために
長期間使用・保管していると、どうしても部品の経年劣化等が生じます。
  • シール材
    劣化
    漏れ
  • 伝熱プレート
    破損・腐食
    2液混合
  • 器内への
    汚れの蓄積
    工場運営に必要な
    温度の流体を
    提供できない
  • 生産量減
運転停止
製造ラインが止まってしまう!!
より高い熱回収率を目指して
製造プロセスに影響のある機器は、管理下にあるため能力低下に気づきやすいですが、熱回収器は回収率が低下しても気づきにくく、有益なエネルギーを回収できていないことがあります。
※熱回収=本来捨てるはずのエネルギーを用いて、低コストでプロセスを温調するもの
初期:40℃→80℃
経年:40℃→50℃
メンテナンスすることで、
初期能力発揮できる
スチーム経費
年間1300万の違い!
※これは一例です
詳細を見る

長期間メンテナンスを怠ると…


  • 目視で確認された伝面部の貫通割れ(左)
    浸透探傷試験で発見された貫通割れ(右)

  • ガスケット交換を行わないまま放置された熱交換器(左)
    ガスケットラインで発生した隙間腐食(右)
  • 焼入れ槽やメッキ層、生き物の水槽が冷えない、漏れた、2液が混ざったら?
  • ビルの空調用冷却器が、冷えない、漏れた、2液が混ざったら?
  • 電機機器などの制御盤用冷却水が、冷えない、水漏れしたら?

熱交換器は、
稼働させるものではありません。
異音・異臭など発生しない
沈黙の機器です。

排液濃縮での熱回収の場合

運転状況
初期

排液 40[℃] → 80[℃] 10[m3/h]の条件で加温

回収熱量=(80[℃]-40[℃])×10[m3/h]×1000[kg/m3]×1[kcal/kg・℃]
    =400,000kcal/h

長年の運転で
能力が低下すると…
運転経過後

排液 40[℃] → 50[℃] 10[m3/h]までしか加温できない

回収熱量=(50[℃]ー40[℃])×10[m3/h]×1000[kg/m3]×1[kcal/(kg・℃)]
    =100,000kcal/h

スチーム量(スチーム潜熱=550[kcal/kg]で計算)
初期
400,000[kcal/h]/550[kcal/kg]=727[kg/h](0.72[トン/h])
長年の運転で
能力が低下すると…
運転経過後
100,000[kcal/h]/550[kcal/kg]=181[kg/h](0.18[トン/h])

能力低下により 0.72[トン/h]-0.18[トン/h]=0.54[トン/h] 初期よりスチームが必要となります。
スチーム 3000[円/トン]、年間8000[h]運転し、能力変化が無いものとすると
0.54[トン/h]×3000[円/トン]×8000[h/年]=1296[万円/年] スチーム経費がかかります。

PHEのメンテナンスをし、適正な状態を保持することで、スチーム経費が削減できます。

運転中の熱交換器に関すること

プレート式熱交換器を整備するには、不具合が生じている要因を見つけることが大切です。
運転中の熱交換器に関することは、下記を確認ください。

トラブル発生原因と対処

熱交換器が所定の能力を発揮していない
伝熱プレートが汚れていませんか?

徐々に能力が落ちてきたと思ったら伝熱プレートが汚れている可能性があります。
伝熱プレートが汚れていると伝熱面に付着したスケールが伝熱抵抗となり熱交換器の能力を低下させます。
工業用水等の水であっても、長年使用することで伝熱プレート表面に汚れが蓄積し、能力を低下させるほどのスケールの層を作ってしまうことがあります。
一度機器を分解し汚れ状況を確認し、伝熱プレートを洗浄する必要があります。
※交換推奨部品
プレートガスケット

配管は図面通りに接続されていますか?

プレート式熱交換器は流体の流れ方によって性能が変わります。
配管の接続位置(流体の入口、出口)を含め、設計していますので対向流にて設計されている機器を並行流に配管すると十分な伝熱性能が確保できません。配管位置を確認し修正してください。
配管位置については組立図を確認してください。

伝熱プレートは間違いなく編成されていますか?

Eプレート(孔の無いプレート)が途中に来ている場合
Eプレート以降の伝熱プレートは有効に活用できません。
エレメント構成図を確認しEプレートを正しい位置にセットしてください。

特孔プレートが正しい位置にない場合
機器によっては伝熱プレートの中に4つ孔でない特孔プレートが混在しています。
この伝熱プレートを所定の位置に編成してない場合、伝熱性能が変わります。
エレメント構成図を確認し特孔プレートを正しい位置にセットしてください。

ミックス編成の場合
正しくミックス編成が行われていないと伝熱性能が変わります。
エレメント構成図を確認し正しいミックス編成としてください。

目的の能力と設計条件は同じですか?

熱交換器は設計当初の仕様通りで設計されています。
運転状況とエレメント構成図の仕様を照らし合わせて確認してください。

トラブル発生原因と対処

プレート式熱交換器に所定の流量が流れていない
伝熱プレートが汚れ(閉塞し)ていませんか?

徐々に流体が流れにくくなってきたら汚れによる影響の可能性があります。
熱交換器内に多量のスケール、スラッジなどが蓄積していくと伝熱プレート間の十分な流路が確保できていない可能性があります。
熱交換器を分解し伝熱プレートを洗浄してください。
※交換推奨部品
プレートガスケット

伝熱プレートは間違いなく編成されていますか?

熱交換器の組み立て後に急に流量が落ちた場合はプレート編成が間違っている可能性があります。
エレメント構成図を確認し、正しいプレート編成としてください。

トラブル発生原因と対処

使っている流体の濃度、成分がおかしい(2液が混合している)
反対側の流体が流れ込んでいますか?

高圧側から低圧側へ流体が流れる場合は伝熱プレートが破損している可能性があります。
伝熱プレートの割れ確認試験を行い破損している伝熱プレートを確認し新しい伝熱プレートに交換してください。
交換できる予備がない場合はAプレートBプレート2枚を1セットとして抜き取り、締付寸法に注意して再組立てしてください。
※推奨交換部品
プレートガスケット、伝熱プレート

反対側の液体が流れ込んでいるか不明な場合

こちらをご覧ください

特孔プレートの際は、日阪に相談してください。

流体が熱交換器から漏れていますか?

プレートガスケットのシール性が低下することにより、流体が外に漏れる原因となります。
基本的にはプレートガスケットの劣化により2液が混合することはありませんが2本同時に劣化した場合は2液が混ざる可能性があります。
液漏れが発生して長らく放置している場合はこのような現象が考えられますのでプレートガスケットの交換を行ってください。
※推奨交換部品
・プレートガスケット

トラブル発生原因と対処

液がS.フレームとDプレートの間から外部へ漏れる
Dガスケットは正しく装着されていますか?

機器のノズル部より覗いた際にDガスケットが突出しているようでしたら一度熱交換器を開放し、プレートガスケットがシールラインにしっかり乗っているかを確認ください。
Dプレートは他の伝熱プレートと異なり表面(S.フレームとの接触面)には流体を通しません。
4か所ある液の通路孔すべてにズレがないかを確認ください。

Dガスケットが劣化していませんか?

Dガスケットが劣化するとDプレートS.フレームのシール性が低下し外部へ漏れる可能性があります。
Dガスケット交換をしてください。
※推奨交換部品
プレートガスケット

Dプレートが腐食、または破損していませんか?

Dプレートが破損した場合、2枚目表面に流れている流体が1枚目表面まで浸入します。1枚目表面は液が流れる部分ではないためシールされておらず、熱交換器の外に液が漏れます。
Dプレートを交換してください。
※推奨交換部品
・Dプレート

ラバーブーツのとき、配管ガスケットを使っていませんか?

ラバーブーツDプレートを含む伝熱プレートに変形が生じている可能性があります。
機器を分解し、伝熱プレートに変形がないか確認してください。
配管ガスケットを取り外してください。

ラバーブーツが劣化していませんか?

機器がラバーブーツを使用している場合、S.フレームの接液部分はラバーブーツでカバーしています。ラバーブーツが劣化するとシール性が低下しS.フレームを伝って外に漏れる可能性があります。
ラバーブーツの交換が必要です。
※推奨交換部品
・ラバーブーツ
プレートガスケット

※型式の見方はこちら

チューブフランジまたはメタルブーツが劣化していませんか?

機器がチューブフランジまたはメタルブーツを使用している場合、S.フレームの接液部分は金属でカバーをしています。
その金属が腐食等で貫通するとS.フレームを伝って外に漏れる可能性があります。
チューブフランジまたはメタルブーツの交換が必要です。
※推奨交換部品
・チューブフランジ、メタルブーツ(交換作業については、日阪へ相談してください。)
プレートガスケット

※型式の見方はこちら

S.フレームが劣化していませんか?

S.フレームが劣化するとシール性が低下し外部へ漏れる可能性があります。
顕著なS.フレームの劣化が見られる場合は、交換が必要です。
※推奨交換部品
・S.フレーム(交換作業については、日阪へ相談してください。)

トラブル発生原因と対処

液がプレートサイドから外部に漏れている
プレートガスケットが劣化していませんか?

プレートガスケットは消耗品ですので、長く使用すると劣化します。
プレートガスケットの交換を行ってください。
プレートガスケットの交換周期に関しては下表をご覧ください。

使用温度 ガスケット交換の目安
100℃以上の熱水 1~3年
30℃以上 100℃未満の温水 5~7年
30℃未満の水 7~10年

※使用条件、流体によっては表には限りません。

締付寸法は所定の範囲内にありますか?

プレート式熱交換器の締め付けは、銘板に記載の締付寸法で管理しています。
締付寸法がMAX寸法よりも大きい場合には所定の寸法内まで締付作業を行ってください。
MAX寸法で漏れが止まらない場合はMIN寸法までの範囲内で様子を見ながら徐々に締めてください。

伝熱プレートの板厚、枚数は銘板通りですか?

機器の締付寸法は、伝熱プレートの板厚及び枚数によって定められています。伝熱プレートの板厚/枚数が設計より薄い/少ない場合、銘板通りの締付寸法に締め付けると機器全体の締め付けが緩くなり流体が外部へ漏れます。
銘板に記載されているプレート板厚、枚数であることを確認してください。

伝熱プレートは間違いなく編成されていますか?

伝熱プレートAプレートBプレートが交互になるように編成します。
A/AまたはB/Bの編成が続くとシール性が低下します。
逆になっている伝熱プレートを反転させ正しく編成してください。

異物の噛み込みはありませんか?

分解、組立時に砂利やゴミなどの異物がプレートガスケット伝熱プレートの間に入ると液漏れの原因となります。
プレートガスケットのシール面をウエス等で丁寧にふき取ってください。

プレートガスケットのコロビ、脱落はありませんか?

熱交換器を横から覗いた際に一部他のプレートガスケットに比べて突出している場合にはプレートガスケットのコロビ等の可能性があります。
プレートガスケットを正しく装着してください。

トラブル発生原因と対処

液が外部に漏れた時の応急処置を知りたい

液の漏れ方にもよりますが、増し締めという方法があります。
組立図または銘板に記載されているMAXMIN寸法範囲内で熱交換器を締め付けることで漏れが軽減される可能性があります。

トラブル発生原因と対処

2液混合したかどうか、知りたい

配管等で2液混合の傾向がみられましたら、こちらの方法でプレートの破損の有無を確認することができます。

こちらをご覧ください

トラブル発生原因と対処

熱交換器の性能を上げたい
熱交換器内にスケールの堆積がある場合

スケールが熱交換を阻害し、熱交換器の性能を下げている可能性があります。機器を分解し、スケールの除去をおこなってください。

熱交換器内にスケールがない場合

プレート式熱交換器は、機器を分解しプレートを追加、あるいは部品を交換することで性能をアレンジすることができます。詳しくは日阪へ相談してください。

また、運転中の熱交換器以外に関することは 詳しく見る